演劇人インタビュー 加藤健一事務所主宰 加藤健一さん

福島テルサで行われた福島演劇鑑賞会の例会、「音楽劇 詩人の恋」で、マシュカン教授を演じられた加藤健一さんに公演中の9月26日、お話をお聞きしました。加藤健一事務所の制作長谷清香さんにも同席頂きました。

加藤健一さんのプロフィール

❖1949年、静岡県出身

❖1969年、劇団俳優小劇場の養成所へ入所。卒業後劇団新芸を結成。「熱海殺人事件」を上演したのをきっかけに、つかこうへい事務所の作品に多数客演。

❖1980年に一人芝居「審判」を上演するために加藤健一事務所を設立。役者としての活動は勿論、上演プログラムからキャスティング、演出、音響、美術、衣装など全てをプロデュースするという個性的な活動を展開。平成19年秋、紫綬褒章受賞。「詩人の恋」の役作りで取り組む声楽は、2003年の初演以来継続、その実力はプロをもうならせている。

 お好きな劇場はありますか?

好きな劇場というのは具体的には思い浮かびませんが、いつもやっている下北沢・本多劇場、新宿・紀伊國屋ホール、紀伊國屋サザンシアターなどはとてもいいホールです。ただ一長一短があって、舞台に立っている分にはいいのですが、東京という土地柄か、舞台の袖が無かったりします。本多劇場は片方の袖のタッパ(高さ)が低くて、セットが収まる高さではないので、工夫が必要ですが、舞台に立つと声の響きが非常に良くて、聞こえないと言われたことは一度もありません。息を吸う音まで聞こえるんです。

ただどの劇場も客席数は400前後。地方公演となると、他に経費がかかりますから400では出来ないということがあるので、ぎりぎりで800でしょうか。800にプラスするところは経費と考えてもいいのではないでしょうか。

大きな劇場で演じる時どんな工夫を?

東京の400人の劇場でやってきたものを、そのまま1800人とかのホールでやるわけにはいきません。毎回地方のホールに入ると必ず舞台で声を出して、どの位の大きさや強さでいくか決めています。大きいホールは慣れないと難しいのですが、慣れればその都度やり方を変えていますので、大きさはそんなに問題ではなくなりますね。慣れていない若い人は訓練が必要です。でもそれをツアーで廻って場数を踏むことによって、だんだん覚えてくるものなんですよ。

もちろん「詩人の恋」で共演の畠中洋さんとはどのホールでも大丈夫です。殆ど全国を廻りましたから。

劇場の条件として、必要なことは?

お芝居の劇場は声がよく聞こえることが第一の条件。残響が長いと大きな問題で、多目的ホールは演劇には向きません。お芝居に合わせた劇場をつくって頂くのが一番ですね。全く残響が無いというのも駄目なんですが、芝居に一番いい残響数が決まっているはずですから、それに合わせて頂けるといいなあ。

壁が全部扉になっていて、扉の開閉で残響を調節できるホールもあるそうですが、お金がかかるでしょうね。

大道具を仕込む際に、11トン車がちゃんとつけられて、搬入が楽に出来ること、舞台の袖がしっかりとれることも必要です。

上演中の非常灯は消せるようになりましたが、足元灯は消えない所が多いですね。足元灯がついていると、舞台が完全には暗くなりません。暗転の時に舞台へ光が行かないように工夫出来ないものかと、いつも思っています。例えば、真下に落としている足元灯の光を後ろへ行くように出来ないものでしょうか。そうすると足元灯がついていても舞台は暗く出来ると思うのです。

細かい点で言えば楽屋の水周り。新しい劇場の楽屋で、手を差し出すと水が出る自動の水道がありますが、一見いいようですごく駄目ですね。コップを差し出しても、手しか感知しないので水は注げないし、手を差し出し続けないと水は貯められない。困ります。

緞帳や壁では勝負をしないで!!

音楽でも演劇でも、劇場というのは幕が開いてからが勝負なので、幕が開く前に勝負して欲しくないんです。具体的に言うと劇場の壁や緞帳。特に緞帳は派手にして欲しくない。入った時に、「うわあ、凄い緞帳だなあ」と思わせなくてもいいんです。幕が開いて初めて「ああ、綺麗なセットだなあ」となって欲しい。そのためには緞帳はなるべく地味がいい。一番困るのは、本来は小さなはずの花びらをわあっと大きく描いたような緞帳です。緞帳が上がった時に、目の錯覚で俳優が物凄く小さく見えるんです。緞帳って元々高価なものが多いじゃないですか。だから派手な緞帳ほど、開いた時にセットが緞帳に負けて、惨めに見えちゃうんです。ブロードウェイの緞帳は皆地味ですね。地味な色の緞帳が開くと、正面に綺麗なセットが立っている、という風になりたいんですよ。出来れば無地がいい。演劇専門ホールである本多劇場や、紀伊國屋ホールは皆無地ですね。だから入った時には別に豪華には見えないけれど、幕が開くと、凄くセットが引き立つように出来ています。

壁が大理石の劇場もありますが、入った時には豪華に見えても、お風呂の中でしゃべっているようで、残響が長くて物凄く使いにくいですね。壁などはなるべく印象が無い方がいい。お芝居が終わった時に芝居の印象だけが残る、舞台装置だけの印象が残る、それ以上のものは残らない、ということであって欲しいものです。仲代達矢さんが関わった能登演劇堂の黒い壁は暗転もしやすいし、使いやすいですね。

目で見る凄さとか、そういう見栄じゃなくて、音がいいとか、肌で感じるいい劇場をつくって欲しいと思います。一見いい劇場には見えないけれど、実際客席に座ってみると凄くいい、本番中に初めていい劇場だと分かるのがいいですね。

加藤さん、お勧めの作品は?

「詩人の恋」もそうですが、加藤健一事務所としては、出来れば全国の方に観ていただきたい。基本的に出来ない作品はありません。ただプロデュース公演なので、同じキャストが集まるかどうかは約束できないんです。

「モリー先生との火曜日」はキャストが変わりました。初演は高橋和也でしたが、長いツアーは無理ということで、今回は私の息子の加藤義宗がその役を演じ、親子共演になります。2013年に廻る予定です。

「詩人の恋」は全国を廻るのに8年かかりました。だんだん年を取ると、青年役がおじさん役になっちゃいますから、やるなら10年以内位に廻りたいなと思っています。ご要望を頂ければ「パパ、I LAVE YOU!」でも、何でも出来ますよ。

(担当 柳谷)

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