第25回定期総会・記念講演会 “福島芸術ホール構想で考えたこと” ②

講師:小林吉則建築計画室代表:小林吉則さん
「福島芸術ホール構想」で考えたこと

コミュニティの構築

芸術ホールの提案ということで、まずは今の公会堂の跡地を想定して計画してみました。

箱だけ作ってしまえばいいのではないですね。私が最近関心を持っているのは、まずお芝居を文化として捕らえていくこと、そして熟成・発信するということです。次に人と人との交流、コミュニティを育む場所であって欲しいということです。例えばワークショップを通じて、プロとアマ、或いは多世代の人達が交流することを促せば、情操教育の場としても機能します。またお金を出してくれる人、或いはイベントがある時にスタッフとして動いてくださる人、そういった運営をサポートする仕組みを作るべきですし、面白く、そして楽しく運営できる方法を広めていくべきだと思います。

無名塾と能登演劇堂もそうですが、いわゆる質の高い劇団やパフォーマーが来ることで、地元の人達に刺激を与え、「ああ楽しかったね。」だけじゃなくて、何らかの形の関わりができていったんですね。それが地元の血となり、肉となっていく、そういう仕掛け作りも必要だと思いますね。

3つの機能が連携、質の高いものに!

お話いただいた時にこの建物の何が一番魅力的かを考えました。芸術ホール・学習センター・図書館が一緒なんですが、実はこれってすごく価値があることだと思います。だから一緒にした方がいいというお話をしました。

行政的に縦割りの運営のため、お互いにやっていることがよく分からないということではなくて、お互いの特徴、いい所は出し合い、欠けている所は補完し合って、横のつながりを意識しながら運営することで、利用者の多様な関わり方が出来るんじゃないかと思います。いろんな機能を緩やかにつないでいくことで、新しいものが見えてくることがありますから、意識的に考えてみるということが必要じゃないでしょうか。横につながって連携しながら、ネットワークを構築していくことで、質の高いものが提供できると思います。

ただ今回図面として書き込んだのは劇場だけで、学習センターゾーン、図書館ゾーンについてはまだです。今回のことがきっかけになって、お互いに話し合う動きが出来て、芸術ホールを創る会だけではなく、図書館の方も学習センターの方も一緒になって市に陳情していけば、効果が全然違うんじゃないかと思うんですね。

市民を巻き込んだ活発な議論を

本日の参加者の印象としては、もっともっと若い方がいてもいいのかなという感じがありますね(笑)。能登演劇堂でもそうですが、物凄く熱い気持ちを持った方は、年齢的にもかなり上になってきています。逆に言えば、あまりにも熱意が有り過ぎて、若い人達が引いちゃったほどで、我々も圧倒されました。でもだからこそ、能登で、あういったことが出来たんですね。だから「若い者は!」と言うんじゃなくて、接点を持ちながら次のステージ、次の世代につなげていくことが必要です。それでこそ歴史と言うか、物語が出来てくると思いますね。中島町を成功事例とすれば、まずきっかけがあって、熱意があって、そこに物語が生まれたことによって、そこにしかないものが出来たのだと思います。やっぱり時間をかけることが大事ですね。

ただ今になると建物が傷んできますので、心が痛むんですね。建物は出来上がってしまって終わりではなくて、使い込んでいかないと駄目ですし、どうしてもメンテナンスが必要です。役所の中で担当者がどんどん変わっていきがちですが、形だけ引き継ぐのではなく、もっともっと思い入れのある人がいると、建物にも気持ちが伝わっていくんですね。

私はこちらにお声をかけていただいて、一昨年お邪魔したのが初めてなので、この街の地域性を正しく解釈しているという自信はありません。ですから今回は、地域性とか、伝統文化というよりは、もっと人間的な視点で何か魅力的なことは無いか、ということを考えてみました。ですからこの「芸術ホール構想」も「綺麗に出来たね、良かったね。」で終わるのではなくて、「何これ?」と疑問や意見があって欲しいのです。地域の団体の方などからもざっくばらんなご意見をいただいて、議論をかわすきっかけの資料になって欲しいと思って、今日はお邪魔しています。

芸術ホールの中核エリアを!

ガレリアホール

ガレリアホールという名前をつけた所は、言ってみれば人が通り抜ける感じです。学習センター・図書館・芸術ホールをつなぎ、どこに行っても人の気配が感じられる仕掛けにしたい、階段や通路を使ってパフォーマンスや展示会ができるようにしたい、と思っています。ここに来た人の自由な発想でどんどん使ってもらっていいと思います。

街には奥行き感が欲しいと思うんですね。例えばいい劇場があったとすると、街なかにレストランやカフェができて、それらが一体となって賑わいが生まれ、街の空気感が出るということが必要になってくるべきです。お芝居は特にライブ感があるので、そこに行って、その時しか楽しめない瞬間があるはずです。そういったものが感じられるような仕組み、空間があればいいと思って、そういう切り口の視点でガレリアホールを真ん中に考えてみました。上に積み上げていくと結構人間の関わりが希薄になりがちですが、ガレリアホールでつないで、視覚的にもここで流れを感じながら、人も風も光も感じられる空間になればいいなということです。こういった大きな中核エリアをつくり、内部の外部施設としてあらゆる場を提供できればいいんじゃないでしょうか。ここをガラス張りにすれば、中が見えて、気配が伝わるんですね。そんなことも考えてみていいかなと思います。

役所的には管理をどうするんだという話になりますが、もっともっと自由に人の動きを促して、とても心地よい回遊性のある空間ができればいいなあと思います。空調とか現実的な問題もいろいろありますが、今はあくまでイメージの段階なので、夢を語りたいです。

メインホール

 ホールはワンスロープ式で800席。ステージと搬入口と楽屋周りは完全にフラットで、段差も一切無い空間にしたいです。

 

中ホール

中ホール(地下1階)⑱、ミニシアターですね。こういったものが一番一般市民的には使いやすいと思います。ここもウォールバック式の椅子をつくることでセンターステージになったり、ワンスロープの200席のステージになったりしますので、講演会やミニコンサートに使えます。或いは平土間にすればリハーサル室、展示会としても対応できますね。

野外ステージも考えてみました。ここでお弁当を食べてもいいし、イベントにまつわるコンサートやパフォーマンスもいいし、地元の若者の野外ライブの場として提供してもいいし、いろんなつながりができますね。

駐車場は地下に考えました。駐車台数は現段階で60台位。お芝居を観るために車で乗り付けて、終わったらぱっと帰るというんではあまりにも寂しいと思います。街なかに車を止めて、そこから歩いて来るとか、駅からコミュニティバス等に乗って来るとか、そしてちょっと早めに来て、お茶を飲んで頂くとか、そんな形で街、その周辺地域と接点を持ってもらえるように、という思いもあって、あえてちょっと少なめで提案しています。

▼「福島芸術ホール構想」のイメージ・図面の詳細はこちら▼

 

私の設計に対する姿勢・考え

私は、能登演劇堂の設計にかかわったことで設計に対する考え方が変わりましたが、実際に今どんな考えで設計しているのか、最後にご紹介させていただきます。

これは、私が設計させていただいた保育園2例です。①はステージに見えますが、実は玄関です。子ども達には、出来るだけ本格的に近いステージでお遊戯会等を体験させたい。でも専用ステージはお金がかかるし、そんなスペースも無い。そこで提案したのが玄関ホールにちょっと段をつけてステージにすることでした。プロのシンガーの方もここでコンサートをやったらしいですよ。

②は中庭を囲んで回廊式の廊下を作った例です。自分達が作った灯りの中を園児たちがぐるーっと回って会場へ誘導してくれるんですね。仕掛けを作っておくということです。その子ども達が成長した時、100人中1人、2人、いや3人位の子どもにそういった記億が心象風景として残るのではないか、そういうことに対して感覚的に反応してくれるのではないかと期待しています。

③は能登のお寺の特徴を生かし、地元の木材を使ってカフェとステージに改造した例です。約2万本のろうそくの灯りの中でコンサートができるステージに。お金をかけず本当にシンプル。今では結構人気のスポットです。

これからこの街、福島のストーリーを描いていく中で新しい空気とか、豊富なオリジナリティが生まれるはずです。子ども達にも楽しい体験が出来るような仕掛けを用意することで、10年後、15年後には今の提案の内容に結びついていく、リンクしていくんじゃないかと思います。今回の提案はそのきっかけになることを願っています。時間はかかると思いますが、皆さんまだまだお元気そうですから、自分たちの住む街、或いは次世代のために何かしようよ、ということで頑張って欲しいと思います。そのために私も是非参加させて頂ければと思っています。

(担当:柳谷紀子)

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