新春対談 ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ  井上一馬さん・水谷圭見さん

2013年11月26日(火)、県文化センターのロビーにおいて、演劇鑑賞会の例会「見上げてごらん夜の星を」を公演中の、ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズの井上一馬さん・水谷圭見さんと「福島の芸術ホールを創る会」の羽田正雄代表との新春対談が行われました。イッツフォーリーズ制作の土屋友紀子さんにも同席いただきました。


いずみたくの情熱やこだわり受け継ぎ、表現していきたい!!

井上一馬さんのプロフィール

✿俳優・振付家

✿鹿児島県出身

✿特技:ドラム・ボクシング・ダンス

✿趣味:バイク

✿代表作品
緑のほとりに舞う花を、天切り松、おどろ、痛快時代劇ミュージカルバクマツ、ルドルフとイッパイアッテナ

水谷圭見さんのプロフィール

✿ 三重県出身

✿ 主な出演舞台
ピノキオ~または白雪姫の悲劇~、中西和久のエノケン、たましいのうた、ルドルフとイッパイアッテナ、草履をはいて

いずみたくさんのこだわりと思い

羽田)昨日舞台を拝見しましたが、作曲に対するいずみたくさんの思いや姿勢そのものが伝わってきて感動しました。イッツフォーリーズはそもそもいずみたくさんが作られた劇団ですが、井上さんが演じられたいずみたくさんの作曲している部分と、若者達が生活する部分を重ねた演出がとても効果的だと感じました。世の中で悩み、苦しんでいる若者達を見て、いずみたくさんは何とかそれを曲で生かそうと悩まれていたんですね。劇中の曲は全ていずみさんの曲、凄いですね。

井上)都道府県全ての曲がCD化されています。校歌から、地域の歌から、CMソングまで、ものすごく多岐に亘りますね。福島の小原庄助さんの歌はご存知でしたか。

羽田)友人が小原庄助さんの子孫ですし、良く知っています。「小原庄助さん」もあんな風にアレンジされるなんて、とても新鮮でした。

いずみたくさんって作曲の際にこだわりがありますよね。珍しい人では、西村晃さんも曲を作って貰って歌っていますし、佐良直美さんの女シリーズなんていうのもありますね。曲の数が多いので驚くのと、色んな種類のヒット曲がいずみさんの作曲だったと改めて思い知らされてビックリしています。

井上)舞台上の台詞にもありますが、いずみたくは、「作った人間の名前は忘れられても構わない、歌が残ればいい」という考えでしたね。私たちは彼が亡くなってから劇団に入ってきた人間なので、直接話をしたことは一度もありませんが、付き合いのあった人間から色々と話を聞いてはいます。「曲を作った人間の名前は忘れられてもいい」と本人は言っているのに、今回僕らは、彼はこんな曲をつくりました、ということをアピールしているところに矛盾は感じるんですが。多分僕らは演じていても、彼の情熱とかこだわりと言うのは、本当は断片的にしか分かっていないんだと思います。これからは想像するしかありません。ただ今言えることは、僕たちがどう受け継ぎ、そしてどう表現していくかが僕らに託されているわけで、それであえて最後のメドレーには自分達のメッセージも込めたい、と思いました。ただ懐メロを歌いに来たわけではない、ただ紹介するだけの媒体にはなりたくない、気持ちを込めないといけない、ということです。

羽田)あのメドレーは歌っていただいてよかったですよ。劇中で歌われている曲は、普段私達が耳にしていない曲が多いのですが、こんなにいい曲があるんだなあと、改めていずみたくさんの作曲術に関心してしまいました。

 

福島の印象はいかがですか?

羽田)井上さんは福島には何度かお出でになっていらっしゃいますね。

井上)鑑賞会の例会では、4年前に「天切り松 闇ものがたり」で来たのが最初です。子ども劇場では何度かおじゃましています。

水谷)福島は初めてですが、やっぱり寒いですね。でも外はすごく寒いのに劇場の中ってあったかいですね。勿論暖房のせいもあるんでしょうが、お客さんの思いが詰まっているからなのか、もうすぐここでやるんだという、自分の気持ちが高揚しているからなのか、何がそうさせるのか、本当のところは私には分からないのですが、心がポカポカとあったまるのをすごく感じましたね。だから全然寒くないんですよ。

羽田)水谷さん入団何年目ですか。

水谷)5年目、まだまだひよっこです。

 

観やすく、演じやすいホールとは?

羽田)全国の色々なホールを使われていると思いますが、ホールについてどんなお考えをお持ちか教えてください。

~舞台から客席までの距離について~

水谷)客席が広いと声が吸い込まれてしまうという感じがあります。お客様が入ることで多少緩和されることはありますが。特に横に広がっていると、見切れ席があるのではないかと不安です。お客様からちゃんと見えているかな、と考えながらやっていますね。

井上)大前提としてやっぱり2,3階席があるホールって多いじゃないですか。アメリカのブロードウェーでミュージカルを観た時にもやっぱり3階席はあったんですが、ステージから客席の後ろまでの距離がすごく近いんですね。ですから高い所から観るとどんな風に見えるかという以前の問題で、演劇というのは映像と違って、肉眼でしか観えないですよね。だから顔の細かい表情が分からないのはすごく危険です。細やかな演技を全部飛ばして、いわゆる大げさな芝居だけになって、演劇じゃなくなるのは間違っていると思います。しかも皆が2.5とか3.0の視力をもっていれば別ですが、ほとんどの方が1.0前後でしょ。特にお年を召してくると、だんだん視力も弱くなってくるじゃないですか。だから高さはいろいろあっても構わないけれど、やっぱり奥行きのあるのは問題です。オペラの様に全体を見たい時には、高さのある2階席の方がいいということもありますが、表情が見えないというのは致命的ですね。

羽田)実際に芝居を観る時、表情が分かる、息遣いが分かるというのが、いいですね。

 

~舞台の使い勝手のいいホールについて~

井上)役者としては客席との距離を考えて出来るだけ舞台の前に行って演技したいのですが、照明の吊りバトンが、舞台の奥の方にある場合、前に行くと照明が当たらない、だから装置も後ろに置かざるを得ない、そうなるとただでさえ客席から遠いのに自分達も後ろにいかないと照明が当らない、ということになる。プロセニアムのある舞台では、いろいろな演出効果は出るでしょうが、客席との距離を何で計算出来なかったのかなあと思いますね。舞台のここまでしが照明が当らないから、そこから前にいくと真っ暗になりますよ、というホールが日本には多いですね。

羽田)全国を回られて、具体的に使いやすく、演じやすいホールってどこでしょうか。

井上)物凄く沢山のホールでやっていますが、ぱっと思いつくのは長岡のリリックホールです。バトンの位置が一番前にあって、照明が当たらなくなるエリアもないし、何よりも客席と近い。客席に勾配があって、どこの客席からも舞台がしっかり観えますね。こういうホールって中々無いんですよ。前の方の客席に勾配が無いと、皆が頭をずらして斜めから観ていることが多いですものね。須賀川のホールは、可動式で、席の配列をずらしていましたね。舞台の使い勝手がいいという点では酒田の希望ホールもいいですよ。

羽田)今回の装置は面白いですね。舞台の上部にもうひとつの舞台空間を作ったのは新鮮でした。でも斜めになっていて、女性はヒールも履いているし、やりにくくなかったんですか。大丈夫かなあなんて思いました。怖くなかったですか。

水谷)あれは慣れですね。ヒールを履いているし、斜めだし、最初はつま先が痛くなりましたが、だんだん慣れましたね。

羽田)上がり下がりというか、昇り降りというか、男性の役者さんが頻繁に移動していましたので、大変だなあと思っていました。面白い装置でしたが、実際あういう装置の無い舞台で演じると、人と人が重なって舞台が見えにくくなることがありますよね。

 

~搬入口、楽屋その他にも色々な問題が~

土屋)今、舞台の装置機材が木材から鉄骨になるなど変化していますので、搬入の条件が合わないと厳しいことがありますね。プラットホームが高すぎて、トラックの荷台より高いホールもあるんですよ。

井上)搬入口はあっても小さすぎて、「天切り松」の鉄骨とかを客席の一番奥からしか搬入できなかったホールもありました。

羽田)楽屋などについてはどうですか。

井上)笑っちゃうような楽屋がありますよね。

異常に低いとか、異常に高いとか。それと鏡前の照明は、白熱灯とかいろいろあるんですが、蛍光灯だと本当の色がまるっきり分からなくなってしまって、舞台に立ったら全然違う色になってしまうということもあります。あれこれ言って、贅沢だとは思うんですが。

羽田)そうは言っても全国を回っていたらどんな所でもやらなくちゃならないのは大変だと思います。私たちも劇団の方にお話を聞いたり、先進地も視察してきたりしましたので、将来福島にはいいホールだと言われるものを是非創りたいと思っています。

土屋)ミュージカルは踊りもあって、動きが激しく、舞台上で役者の感じる温度と、客席で感じる温度との差があります。古い劇場では舞台と客席の空調が一緒の所が多いですね。

 

こんな世の中だから、文化芸術が大切!!

舞台「見上げてごらん夜の星を」

羽田)東日本大震災以来、福島は復興が遅れていて、他の地域とは違った空気があります。今は復興が優先、文化は後回しだという空気が無いわけじゃありません。ただ皆が落ち込んでいる時に一番役割を果たしたのはミュージカルのような音楽や芝居であり、文化面での活動が人の心を救ったのは事実です。ですから文化芸術の大事さは本当に身に沁みて分かっていますので、こうして福島に来ていただいたのを感謝しています。今回のお芝居でも「国を愛する」という台詞がありましたけれども、本当に日本を良い国にするには、国民一人ひとりがそれぞれの分野で頑張ることが大事だなあと思いますので、イッツフォーリーズの皆さんにも頑張っていただきたいと思います。

最後におふたりからメッセージを!!

水谷)私は演劇鑑賞会の例会で来たのは初めてだったんですが、やっぱり演劇を自分たちの住む街で盛り上げたいと頑張っている皆さんに何かをしたい、私たちの思いを伝えたいということがすごくあります。子ども達にも、おばあちゃん、おじいちゃん達にも、全ての人に勇気を与えられるというのは、おこがましい気もするんですが、パワーを与えられるような役者さんになりたいなあと思っています。昨日も終演後に送り出す時に、お客様に「ありがとうございました」と挨拶していると、「元気をもらいました」とか、「勇気をありがとう」と言ってくださる方がいて、自分が勇気を与えたいと思っていたのに、私も皆さんから勇気を貰っているんですね。

私達は、日本の文化を、演劇をよくしていきたいという思いがあるのですが、それがこうして皆さんとお会いして同じ気持ちになれる、というのは素晴らしいことだと思っていますので、皆さんの活動を応援していきたいです。

私たちも何かを伝えていきたいという思い、気持ちをずっと持ち続けていきたいなあと思っています。当たり前なんて無いと思うし・・・。

羽田)水谷さんはブログの中で「明日は明日の風が吹く♪」と言ってらっしゃいますね。

水谷)私は結構楽天的なタイプです。いやなことや、結構つらいことがあったりするんですが、今日は今日、明日は明日、明日は何か明るいことがあるはず、とポジティブに行こうという思いがあって、「明日は明日の風が吹く」と言う言葉を座右の銘と書いています。

羽田)スイーツがお好きだとか。そういうのを食べている割にはスマートでいらして。

水谷)はい。甘いものは大好きです。

井上)当たり前の話なんですが、僕らは舞台俳優なので、舞台でしか活動の場がないんですね、基本的に。ですからどんな舞台でも僕達は立たなくてはならない。立たないということは自分の人生を否定することになってしまうので、どんな場所でもいいのです。鑑賞会の皆さんもそうですが、舞台空間に足を運ぶ組織ですから、他の活動はないですから。海水浴に行くために集まっているわけじゃない。だから目的はここにしかない。確かに世間一般からすると、舞台俳優とか、舞台鑑賞組織というのはメジャーじゃなくて、マイナーの印象があります。だけど1回ホールを作っちゃうと50年間で何百万人の人が通うということになります。だから50年間、70年間というトータルで考えたら、ものすごい数の人間に影響を与える場所だと思うんです。生でしか成立しないものをやるというのは、スポーツもそうですが、多分人間が人間として一番餓えている部分だと思います。やっぱり目の前でドラマを観たいという欲望、願望だと思うんですよ。今は道具に頼っている面がありますが、最終的には絶対“生”にたどり着くという確信があるので、そこがどうでもいいものだった場合と、やる側と観る側の幸せを物凄く考えた場合とでは、多分50年、70年というのはとても大きな違いがあると思います。その一つにミュージカルをやっている僕らはマイクをつけているんですが、出来たらマイクをつけないで、ミュージカルをやりたいんです。台詞をしゃべっている時はここから聞こえるのに、間口の広い舞台だと、歌は別な方から聞こえてくるという不自然さがあるところに、もう一つミュージカルが浸透しない理由があると思いますね。将来、体に拡声器がついていて、体全体から音が出るようになると、もっと臨場感が出ていいんですがね。実際どうなるかは分からないですが。

それから会員組織だから座席が毎回変わりますよね。ホールによってはデットスペース、ここに行くと音が良く聞こえないという所があるんですね。だから外観も大事ですが、どの席にいても等しくいい音で聞こえる、いい条件で観られるというホールを作ってくれたら、演劇に携わる人達は皆が幸せになれるんじゃないでしょうか。かなり矛盾している話なんですが、平等じゃないからこそ面白いということもあるにはありますけれどもね。

羽田)絶対そういうホールを作りたいと思っています。大変貴重なお話をありがとうございました。

(担当:柳谷紀子)

About 福島の芸術ホールを創る会

View all posts by 福島の芸術ホールを創る会 →

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です