演劇人インタビュー 舞台監督・高橋邦智さん

こんなホールがほしい

トム・プロジェクト公演『満月の人よ』舞台監督・高橋邦智さん

3月27日(金)、福島演劇鑑賞会第389回例会トム・プロジェクト公演『満月の人よ』(作・演出=東憲司、出演=村井國夫、岡本麗、山崎銀之丞、藤澤志帆)の舞台監督・高橋邦智さんに福島テルサFTホールのホワイエでお話をお聞きしました。

テルサは演劇公演にはちょうどいい大きさ

全国を旅してますから好きなホールはあるんですが、ここが1番というホールはないですね。舞台も客席もいいけど搬入口が駄目だとか、楽屋は沢山あるけど衣裳や床山さんの部屋がないとか、完璧なホールはまず見当たりません。お芝居をする上では石川県七尾市にある能登演劇堂やこの福島テルサFTホールは好きですね。テルサは473席、ほとんど残響しない造りで、役者さんのセリフが会員さんにちゃんと届いています。楽屋が地下にあるのが残念で、楽屋もお手洗いも舞台と同じフロアにあれば役者さんが楽に出入りできます。

「福島芸術ホール構想」の気になる点

いただいた「福島芸術ホール構想(以下“ホール構想”と略す)」の中で、ひとつだけ気になったのが、舞台装置を積んだ10トンウイング車を止めておく搬入スペースの天井の高さです。図面の通りだと上の階で使うダクトとか配管などが天井を這うようになるので隙間がなくなり、トラックが入らない、または荷室のウイング(扉)を開くことができない可能性があります。高さは2階分以上必要です。この点が改善されると文句ありません。

演劇がちゃんとできる条件1

舞台は広く高くが理想

テルサの舞台袖は狭いんですが、もっと狭いホールはいくらでもあります。舞台奥の壁がホリゾント壁(背景用の布製の白い壁)になっていて、パネルなどを立て掛けられないホールも地方には結構あります。そうすると置く場所がないのでトラックに積んだままにしておき、ある程度舞台の準備ができたら運ぶようにします。通常より少し時間がかかりますが、ツアーのスタッフはそれぞれのホールに合ったさばき方をその場その場で工夫し、全員の力でやりきります。“ホール構想”の舞台袖は十分広くとってあるので、大道具・小道具をさばくときにとても助かりますね。舞台は広く高くが理想です。

 

演劇がちゃんとできる条件2

舞台の床の釘打ち

『満月の人よ』舞台装置 背の高い樹木が見える

公演地には事前に舞台図面を送ってホールの担当者と打ち合わせをしておきます。搬入口はどうなっているのか、禁止行為はあるのかなど、気になるところはすべてチェックします。すると舞台の床に釘が打てないホールもあるんですよ。これが決して少なくありません。釘を打つことで舞台装置を固定するわけです。打てないときは、カーペットを床にしっかり留めて、その上に鎮(しず)という錘(おもり)を乗せて動かないようにします。空いているバトンがあれば、それに倒れ止めとして細いワイヤーやロープとかで縛ります。装置によっては一切釘を打たなくても大丈夫なものもあります。ただ、本当に危ないときだけはホールの担当者に1~2本打たせてくれませんかとお願いしています。『満月の人よ』の舞台装置では背の高い樹木だけホールと交渉して打たせてもらっています。

演劇がちゃんとできる条件3

舞台のバトンの位置と数

ホールによっては緞帳が何種類もあったりして、舞台の前に紗幕を吊りたくても吊れないことがあります。紗幕を下ろして場面転換するお芝居もあるので、青山円形劇場(2015年3月閉館)のように緞帳が2枚あっても、その後ろに手引きで1本、電動で1本空のバトンがあれば、紗幕でもスクリーンでも吊ることができるんですね。前の方で連れるバトンがあると演出の幅も広がるし、東京で上演するのと同じ舞台効果を出すことができます。ホールによっては、2~3間(3.6~5.4メートル)奥まで何も吊れないところがありますよ。照明もそこまでなかったりするから照明を当てるために舞台装置がどんどん奥へ引っ込んでいくと、お客さんから離れてしまいます。東京では、緞帳の前にプロセミアムサス(プロサス)と呼ぶ照明が吊れるバトンのある劇場が主流です。地方のホールでプロサスのないところは、本当は上から狙いたいけど吊れないから横からなんとかしようと照明さんと相談して工夫することもあります。

地方のホールでは1サスと2サスの間に、天板であったり松羽目(松を描いた羽目板)であったりスクリーンであったりが吊られていて、その部分に吊りたくても何も吊れないときがあります。事前に分かっていればパイプなどを持ち込んで、すのこ(舞台天井部の吊り物の滑車などが固定されている橋上の構造物。キャットウォークともいう)からロープを下ろしてバトンの代わりにしたりします。

バトンの数も一杯あればいいというわけではなく、バトンとバトンとの間の隙間がなくて困ることもあります。バトンが近すぎて吊るパネルの厚みがあると、『満月の人よ』の場合は“月”がそうですが、前後のバトンが使えなくなってしまいます。

天狗の羽根

(満月の人よの本番中に)天狗の羽根はどうやって落としたか?ですか。“ふりかぶせ”という仕掛けです。布の中に羽根を入れて置き、一番外に巻いてある布がパタッと外れて垂れ下がると中の羽根が舞い落ちるんです。

専用ホールがほしい

音楽に必要な反射板は演劇にはいりません。音楽ホールと演劇ホールの両方がつくれれば一番いいでしょうね。専用ホールがほしいですね。ただし、演劇ホールであっても、ミュージカルを呼んだときにオーケストラピットがないと困るんじゃないでしょうか。客席の前の部分を可動式にして、普段は客席だけど、ミュージカルのときは取り外してオーケストラピットにする。指揮者から確実に舞台が見える深さで、各パートの演奏者には指揮者がしっかり見えるようになっていれば、役者さんとオーケストラの息がピッタリ合った素敵なミュージカルが堪能できますよ。

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