新春対談 劇団民藝 中地美佐子さん

「演劇ってライブで、生。お客様との一体感が最高!!」

2014年11月25日(火)、福島テルサのホワイエで、福島演劇鑑賞会の例会『海霧』に出演し平出リツとその娘、千鶴の二役を演じている中地美佐子さんと、「福島の芸術ホールを創る会」の羽田正雄代表との新春対談が行われました。

中地美佐子(なかじ・みさこ)さんのプロフィール

*奈良県出身
*特技:ピアノ
*1992年民藝に入団、1996年劇団員
*初舞台:1993年『終末の刻』
*最近の舞台:『アンネの日記』『帰還』『満天の桜』『真夜中の太陽』『夏・南方のローマンス』『白い夜の宴』

 

客席のお客様と向かいあって!

羽田)本日はありがとうございます。福島の公演は22日から25日までの4日間ですね。

中地)今日で終りだなんて寂しいです。

羽田)福島には何度も来ていただいています。

中地)前回は『明石原人~ある夫婦の物語~』でした。その時から福島はいいなあ、このテルサもいいなあと思ったのを覚えています。

羽田)東日本大震災で県文化センターや公会堂が壊れた時、このテルサは無事で使用できたので、私たちも劇団をお呼びすることができて命拾いしました。私たちは観やすく、演じやすく、使いやすい800席の中ホールをぜひ福島につくって欲しいと市に要望して26年になるんですよ。新ホール建設の運動を続ける中で、全国の先進的なホールを視察したり、今日のように劇団の方にお話を聞いたりしています。中地さんが全国を回られていいホールだなと思うのはどこでしょうか。

中地)私にとっては福島テルサです。このホールの473席という客席数がいいですね。と言うのは、演劇ってやっぱりライブで、生ですから、私達がいくら一生懸命お稽古しても稽古では本当の芝居にはならないんです。その日の会員さんと出会って初めてお芝居になるんですね。そういう意味では一体感が一番大事なんです。ですから何をもってはかるかといったらまずはこの本番の時間です。こちらが何かを伝えようということがなくても、会員さんは観てくださっているんだということが芯から信じられるんですね。舞台からも皆さんが大体見通せますし、お互いにちゃんと向かい合えるという、それはもう本当に素晴らしい体験です。

羽田)それは大事ですよね。舞台に立っていてもやっぱり雰囲気というのは分りますよね。

中地)800席と言いますと、もう少し大きくなりますが、距離は近いですよね。1000席を超えるとやはり遠いと感じますね。きっと細かい表情は遠くまでは伝わりにくいでしょう。そうすると特に私などは、伝わっているのかな、もっと伝えないといけないのかな、と思ったりします。もう一つは声の通りぐあいですね。

羽田)台詞が聞こえにくいのは致命的ですものね。

中地)聞こえにくい場所があるとか、後ろは全く聞こえないとか。大きなホールだと残響が邪魔になります。皆さんおっしゃると思いますが、残響がないホールだと私達の芝居がやっている瞬間にお客様へストレートに伝わります。ですから、声の通りが均一で、どの客席でもはっきり聞こえるというのが理想ですね。こちらも安心です。私達はもちろん、どのホールでも観てくださっていることを承知の上でやっていますが、ここテルサだと本当に皆さんが同じように感じてくださっているのが良く分かります。

羽田)さっきおっしゃった一体感ですね。

中地)そうです、一体感。やっぱり生のライブというのはこれだなと。そしてお客様と一緒につくり上げるという意味ではこのテルサが一番ですね。

 

舞台を支える裏も大切

対談中の羽田正雄代表

中地)本番を迎えるまでの搬入や楽屋の使い勝手も大切です。テルサは楽屋が地下ですが、できれば楽屋は舞台と同じフロアの、しかも舞台の後ろに欲しいですね。そうすると舞台の下手と上手のどちら側へも移動しやすくなりますからね。

羽田)テルサ建設の際は私たちの要望も取り入れてもらいましたが、敷地面積が狭くて楽屋が地下になってしまったのが残念です。

中地)舞台にずっと上がりっぱなしといっても、普通は準備も着替えも裏でやりますから、楽屋が近いと役者もスタッフも助かります。また、大道具など全部をトラックから舞台や楽屋に運び入れ、お芝居をし、また運び出すわけですから、そういう意味では搬入口は同じ階に必要です。舞台上手と下手の袖の面積もできるだけ広い方が物も置けるし、動きやすくなります。

衣装の洗濯は毎日です。もちろんトラックには劇団の洗濯機も乾燥機も積み込んであって劇場に持ち込みます。乾燥機が一番頑張っています。もし劇場にあれば何台かでやっていけるのでこれも助かります。(注:テルサには両方あります)

全国のどこの劇場がいいかとなると、この部分は良くてこの部分は大変かなと思ったりして、具体名はちょっとね。でもそんな中で一番に思い出すのはここテルサです。

羽田)それは良かったです。

中地)『海霧』も初日からすごく乗せていただき、背中を押してもらうというんですか、一緒に乗っかって、この何日間かで芝居も上がってきたという感じです。同じ役でも毎日違ってライブだなあって思うし、すごく楽しんでいます。

 

親子の二役を演じられた感想は?

左)伊藤孝雄さん 中)樫山文枝さん 右)中地美佐子さん 【リツ役】

羽田)今回中地さんは平出(ひらいで)リツと彼女の娘・千鶴(ちづ)の二役をやられていますね。二役というと全く別の役柄が多いと思いますが、親子の場合と全く違う役の場合とではどう違うんでしょうか。それにしても二役は大変でしょう。

中地)私は1つの芝居で何役もやるということ自体中々経験がありませんが、今回はその二役にも味があって、それを同じ人物がやるというのがまた芝居のいいところかも知れませんね。二役というのは、私自身も次の役への切り替えが大変ですが、周りも大変のようで、私がいくら切り替わったつもりでも、樫山文枝さんにしても、桜井明美さんにしても、私がやっているわけですから、戸惑いもあるでしょうね。それも含めて劇団ですから、家族と同じです。

羽田)リツは家業を繁盛させるため、好きな男性がいても、父が薦めた男性と一緒になる、そういう時代の女性ですね。特に北海道開拓は大変過酷な時代。実は函館出身の私の家内の祖先は高知県から北海道開拓に行っているんですよ。明治維新以降、色々と大変だった時代に、霧に代表されるような釧路という過酷な土地で家族を養って生きていく女性さよを樫山さんが見事に演じられていましたね。

中地)(うなずきながら)リツは、ずっと家族のように育ってきた雄作とこれから恋に発展していくだろうというところで、父の言いつけで婿養子をとって諦めるんですね。きっとリツは、自らそれを選んで受け入れていくという決意をしたんでしょうね。やらされたというのではなくて、やはりある決意を持って主体的に生きたのだと思います。雄作を神 敏将(じん・としゆき)さんがやられています。千鶴の世代になり、相手役の伊沢末治も神さんがやられています。今度も商店と使用人という同じ立場なんですね。さよは最初反対しますが、好きな者同士許すということで成就します。良かったですよね。

演じた役から生き方を学びながら

右)中地美佐子さん
  【千鶴役】
中)桜井明美さん
左)樫山文枝さん

羽田)最初リツが可哀想でしたが、リツの子どもの千鶴が、本来リツが思っていた男性に重なる立場の男性と一緒になるという設定は、観ていても安心したというか、救われたというか、そういうつくりになっているなあと感じましたね。

中地)それは同じ人物がやるという良さでしょうか。リツは1幕のラストで若くして亡くなりますでしょ。千鶴が生まれて、やっと安心したおっかさんに「そうやって笑っていてくれるのが何よりの親孝行なんだよ」と言われて、リツは「そうか、これからは努めて笑うようにしよう」って。「努めて」というところはいかにもリツらしいのですが、笑うようにしようと言ってすぐに亡くなってしまうんですね。同じ人間が千鶴をやるわけですから、私は千鶴には色んな苦労があっても笑顔の多い人生になって欲しいなあと願いながら演じています。千鶴はさよに学問をさせてもらって大学も出るんですが、「私はおばあちゃんのようになりたい」って言うんですね。さよは一家の主婦です。そういう風に人生を選んでいこうとする千鶴が素敵だなと思います。6年前の初演時はそこまで思っていなかったんですが、今は女の人の仕事だったり、家庭の主婦だったり、日々の暮らしの大切さが身に沁みています。

 

劇団民藝公演『海霧』

作・原田康子(講談社刊「海霧」)
脚本・小池倫代 演出・丹野郁弓

〈あらすじ〉

たくましく生き抜いた一族の壮大な物語

明治8年、新天地への夢を求めて九州の佐賀から北海道の釧路へと渡り、店を開いた平出幸吉(伊藤孝雄)と妻さよ(樫山文枝)。懸命に働いたおかげで、平出商店は繁盛し、やがて隆盛を極めます。
しかし、平出商店の悩みの種は、幸吉が選んだ婿と跡取りである男勝りの長女リツ(中地美佐子)との不仲でした。リツは婿の修二郎(みやざこ夏穂)が嫌いでしたが父の言いつけで仕方なく結婚したのです。その二人にようやく娘・千鶴(中地の二役)が生まれ、喜びに包まれたのも一瞬でした、リツが病に倒れてしまいます。
こうして、平出家には次々と荒波が押し寄せ、時代は明治、大正、昭和へと移り変わります。そんな激しく揺れ動く時代の中にあっても、一族を見守り支え続けたのがさよでした。いついかなる時でもどこにいても、さよの胸には、あの北の海の「深い霧」があったのでした…。

 

皆でものをつくる世界に憧れて

羽田)中地さんはなぜ新劇の俳優になられたんですか?

中地)皆でものをつくっていくというのが好きで、こういう世界に憧れていました。演劇はフィクションですが色んな人生があります、演じることができます。そして劇団民藝を知って、今こうやって各地で芝居をやらせていただいているという感じですね。

羽田)民藝の創立は1950年ですか。宇野重吉さん、滝沢修さん、北林谷栄さん、大滝秀治さんなど素晴らしい俳優さんを沢山輩出されていますね。今の劇団代表は奈良岡朋子さんですね。中地さんや桜井さんが中核で頑張っていらっしゃる。これからもますますいい芝居をお願いします。私たちも芸術ホールを実現できるよう頑張ります。今日はありがとうございました。

中地)お互いに頑張っていきましょう。

(担当:笠原、柳谷)

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