「どこでだって幕は開くけどたどりつくのは劇場芝居」劇団120○EN(福島市)

劇団120○EN(ひゃくにじゅうえん)は、福島市で活動しているアマチュア劇団です。これまで、ホールにこだわらず、様々な場所での上演を行ってきたからこそ気づいた「芸術ホール」の必要性。福島の文化向上のために、僕らが、そして僕らのあとに続くであろうこの街の子どもたち、若者たちが使いやすいホールが必要だと思います。

◆震災直後に旗揚げすれど

東日本大震災直後、福島市内の劇場は、避難所として使われていたり、破損があったりと、とても使用出来る状況ではなく、予定されていた文化公演が中止となっていました。そんな中、市民の方から「演劇が見たい」との声を頂き、震災翌月に劇団120○ENを旗揚げしました。当時のメンバーは、3月11日のあの時間、舞台を上演していた福島大学演劇研究会の有志でした。

以降、2011年は12月まで毎月創作劇を上演。その間、ホールは使えない状況が続きましたが、「演劇はホールじゃなくたって出来るんだ!」との想いを胸に、様々な場所で上演を続けてきました。

しかし、「ホールでなくても」と口に出すほどに、慕情は高まり、「この街にぴったりの劇場があれば…!」と愛しい想いは増していき、つらつらとこの文を書いている次第です。

僕らが上演してきた会場とそこから見える劇場の意義をお伝えします。

劇団120○EN 旗揚げ公演ポスター

2011年4月。僕らの旗揚げ公演を行った会場は福島市市民活動サポートセンターの多目的ホール。僕らにとって劇場以外の場所では、初めての公演でした。ここでぶつかったのが、「響きすぎる問題」です。

市民活動サポートセンターはJR福島駅からのアクセスも良く、職員さんも素敵な方ばかり。しかしただ一点、音が反響しすぎるという問題が有りました。大きな声を出すと、音が響きすぎて、セリフがとても聞き取りづらくなってしまう。響きを重視する音楽用ホールが、演劇には向かないことを痛感しました。

そうはいっても、当時、他の会場の選択肢がなかった僕らは、窓や壁に吸音効果の高い「ダンボール」を貼り、響きを軽減させ上演する方法を取りました。ただし、貼るだけで一日かかるという非効率なものでした。

音の問題は、他会場でも。広い会場であればあるほど、客席によって音響の聞こえ方が大きく変わるという問題点もありました。

 

◆野外演劇に挑戦

室内が響きすぎるのであれば、と野外演劇にも挑戦。信夫山にある護国神社の神楽殿や、阿武隈川隈板での公演を行ないました。

野外ならではの自然の音や夕暮れなどと一緒に、演劇を楽しんでもらうことが出来ましたが、ここでは劇場では考えることも無いような問題もたくさん知ることになりました。

まずは雨対策。雨の際には中止にするのか?中止の場合はどうやってお客さんに知らせるのか。さらに、お客さんが座る椅子の準備はどうするのか?ゴザ、キャンプ用の椅子などを準備はしましたが、とても長時間の観劇に耐えられるものではありませんでした。

また、河原で上演した時は、風が強い日だったこともあり、土埃が舞い、お客さんに大変な思いをさせてしまったこともありました。

天候、自然に左右される野外公園の難しさ。そして、どんな天気でも上演できるホールの「当たり前」のありがたさを感じました。

劇団120○EN 第10回公演『ビー玉雨と眠たげな夏』 阿武隈川隈板での公演

室内で問題になってきたのはキャパシテ

蔵での公演も行いました。福島県立図書館の近く夢奏蔵(ゆめかなでぐら)は、蔵を改造した施設で、40人前後の客席。この頃から、キャパシティが気になりだしました。

夢奏蔵で行った作品は福島大学のアカペラサークルと創った「アカペラ×演劇」をウリにした作品。そのおかげで沢山のお客様がいらしてくださいました。結果、立ち見が出てしまったり、足を運んでくれたお客様にお帰りいただくことになってしまったり…。

この問題が究極に高まったのは、長楽寺禅堂での公演の際。この公演では、40人ほどが入れるスペースに、70人を超えるお客様。ぎゅうぎゅう詰めに座ってもらってもまだダメで、苦肉の策として、舞台上、演技スペースとしてとっておいた場所を客席として開放。この時は、舞台と客席の区切りのないフラットな形でやっていましたから、出来たことでしたが…。稽古の時の半分まで狭まった舞台で本番を迎えるという恐ろしさでした。

旗揚げ時は十数人だったお客さんもおかげ様で、百人を超えるようになってきています。お客さんの観やすさを考えると、「どんな会場でも良い」とは言えなくなっています。

しかし、客席に余裕のあるホールは、なかなか押さえることが出来ません。震災後は福島でイベントが多くなり、会場がとても押さえづらい状況にもなっています。今年度から入る福島県文化センターの工事は、さらに福島市内で公演できる会場を減らすことにもなり、今ある会場も押さえることがより難しくなりそうです。

会場が足りず、この街での演劇の公演が減っていくことになることは、僕らだけの問題でしょうか?演劇は演じる側だけでなく、観る側も必ず必要であり、観ることで感じ、一緒に文化を創っていくことが出来る文化です。若者の上演には若者が集まり心を動かしています。これからの福島の芸術文化の発展、そしてそれにともなう、子どもたちの情緒教育などにも大きく関わるものではないでしょうか。

劇団120○EN 第13回公演『歌舞伎デカ前田刑事』 長楽寺 禅堂

◆福島テルサでやりたい!POP演劇祭

予算面でも問題が出てきます。特に、学生劇団などは、恵まれたホールで上演したいという想いはあっても、キャパシティと予算の問題から上演が難しくなっています。

福島演劇鑑賞会の10代、20代メンバーを中心に結成したPOPでは、毎年春に「POP演劇祭」を行っています。地域の文化振興と、自分たちの技術の向上はもちろんのこと、「福島テルサFTホールで上演したい」という想いを持つ学生やアマチュア劇団が、お金を出し合って上演したい、と始まった面も有ります。現在は、福島大学演劇研究会、福島県立医科大学演劇部、橘高校演劇部、県北地区演劇部の有志の劇団24などと一緒に活動を続けています。

福島テルサの、キャパシティを超える人数を一劇団で埋めることは難しく採算が会いません。そこで、みんなで力を合わせて開催を続けています。しかし、本当はキャパシティ、そして予算ともに、僕らにぴったりのホールがあったらどんなに良いことでしょうか?

第4回POP演劇祭 参加団体による集合写真

 

◆劇場の意義

福島市では、高校生や大学生の演劇の公演が活発になってきています。橘高校をはじめ、福島南、明成高校などの各校演劇部はコンクールでの上演だけでなく、自主公演も行ない、県北地区の有志による劇団24も活動。福島大学演劇研究会、福島県立医科大学演劇部も創意工夫のある公演を続けています。

今、まさに演劇という表現活動をしている彼らは、東日本大震災と原発事故を、10代という多感な時期に体感しています。震災の日々を原風景とし、沢山のことをその身で考え、表現しようとしています。彼らの作品を観ていると、今後の日本の芸術文化活動を切り開く素晴らしい感性を持った人物が、この街から出てくるのではという予感がしてきます。震災という事実は消すことは出来ない悲しい出来事ですが、震災があったからこそ、この街で生まれる人物、芸術があるはずです。

しかし、彼らが想い描くことを発表する場が、今の福島市には少なすぎます。現在は、福島市文化センター小ホールやAOZの多目的ホールなどでの上演が多い状況ですが、キャパシティや照明、音響設備を考えると決して満足な環境とは言えません。

彼らの芽を大きく育んでいくための場所が必要です。芸術ホールは、ただ上演するだけの箱ではありません。

開演前の期待のざわめきから、客電が落ち、暗闇の前の静寂。上演中の舞台と客席の一体感。そして終演後の幸福な空気。言葉こそかわされないかもしれませんが、その場にいる人々が、老若男女も身分も問わず、ひとつになるコミュニティがそこにはあります。

劇場は、文化コミュニティの核となる施設であるとともに、未来につなげるための大切な土であるはずです。この街の未来を考えた時、芸術ホールを、今こそ求めています。

 

劇団120EN これまでの上演場所一覧

2011.4~ 福島市市民活動サポートセンター多目的ホール 40席程度 声が響きすぎるため対策必要
2011.6 御倉邸 20席程度 広めの和室(18畳・縦長の部屋)・袖無し
2011.8 倶楽部あーむ 20席程度 クラブ備え付けのホール。低いステージ有
2011.10 福島県文化センター小ホール 379席 震災直後だったため、使用料半額。1SUS
2013.6 福島護国神社 神楽殿 30席程度 野外。照明・音響設備・袖無し
2013.9 阿武隈川 隈板 船着場 30席程度 野外。照明・音響設備・袖無し
2013.12 夢奏蔵 40席程度 改築した蔵。二階も有。袖なし
2014.4 こむこむ わいわいホール※POP演劇祭にて 292席 POP演劇祭で使用
2014.8 長楽寺 禅堂 40席程度 椅子無しで使用 / 冷暖房・音響設備有
2015.10 福島テルサFTホール ※POP演劇祭にて 473席 POP演劇祭で使用
2015.2 AOZ 多目的ホール 100席程度 照明機材は少なめ。ステージ有
2015.6 Black comet club ※企画大人の120○ENにて 10席程度 バー。ワンドリンクオーダー制で上演
2016.2 こむこむ 企画展示室 70席程度 180平方メートル。照明・音響設備無
2016.10 旧 廣瀬座 200席程度 明治期に作られた芝居小屋照明・音響設備無

 

 

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