新春対談 劇団扉座 有馬自由さん

2016年11月27日(日)、福島市公会堂の2階ロビーで、福島演劇鑑賞会の例会『歓喜の歌』に、商店街の会長さん役で出演された劇団扉座俳優の有馬自由さんと、「福島の芸術ホールを創る会」の羽田正雄代表との新春対談が行われました。

 劇場という空間には、 沢山の可能性と楽しさが!!


有馬自由(ありま じゆう)さん

✿1963年9月20日生まれ 京都府出身
✿1988年劇団善人会議(現・扉座)入団
✿主な出演作
【舞台】
加藤健一事務所『煙が目にしみる』
新国立劇場『かくて新年は』
キョードーファクトリー『ジョアンナ』
ココロ・コーポレーション『探偵~哀しきチェイサー』ほか多数

【福島演劇鑑賞会の例会】
『アゲイン~怪人二十面相の優しい夜~』(03)、『新浄瑠璃 百鬼丸』(09)

【TV】
2007年NHK大河ドラマ『風林火山』ほか


お芝居で地域を元気づけたい!

劇団扉座『歓喜の歌』より

羽田)昨日、今日と観客の皆さん、本当に喜んでおりました。エネルギーを頂きました。

有馬)原作が立川志の輔師匠の落語で、その落語も抜群に面白いんですよ。3つの落語をうまく合わせてあるんですが、僕のやった商店街の会長さんは、「ガラガラ」という落語の登場人物です。落語から頂いたそのままのセリフもあって、最後はあんな風に落ちがあってね。
師匠が一人でやられたら勿論面白いわけで、それをお芝居でやった時に、「一人でやった方が面白いんじゃないの!」と言われたら困る訳で、そこが戦いどころでしたね。喜んで頂けたようで嬉しいです。自信になります。

羽田)設定がダブルブッキングなどという、日常的にもありがちなことをうまく組み合わせて、面白く創られていますよね。扉座さんのお芝居はいつも本当に面白くて楽しみです。
今回有馬さんはタップを踏んでいらっしゃいましたが、タップは前からずっとやられているんですか。

有馬)いえいえ。公演の何ヵ月か前、まだ台本は出来ていないけれど、座長の頭にはすでに構想があったようで、「どんな役で、どんな内容かは分らないけれど、とりあえずタップはやっといて」みたいな感じでした。別の舞台がありましたので、きちんと習う暇はありませんでした。ちゃんと取り掛かれたのは、夏の終わり頃かな。研究所にはタップの授業があるので、そこの講師の方に課題を頂いて、ひたすら自主練習をやっていました。稽古が始まってからは、実際に振り付けをして頂き、アドバイスも頂きながら練習しました。

羽田)「歓喜の歌」の稽古期間はどの位ですか

有馬)大体4週間、約ひと月でしたね。

羽田)今回は、演劇鑑賞会の会員によるコーラス隊も出演しましたね。

有馬)コーラス隊の皆さんの歌の稽古は夏頃からやって頂きました。僕らも台本が出来る前から「とりあえず、この曲とこの曲は間違いなく歌うから、全員歌えるように」ということでしたが、音楽監督の深沢桂子先生からは「ワークショップで各地域を廻ってきたけど、皆さん凄いわよ。ちゃんとやらなきゃあなた達えらいことになるわよ」とおどされて、「はいっ!(背すじピンッ!)」って感じでした(笑)。

 

羽田)福島は合唱王国と言われていまして、どこへ行って聞いても、練習している歌声は上手いんですよ。

有馬)確かに今回三声でコーラスをやって頂いたと思いますが、僕らは二声しか練習していないので、より難しいことをやっていらっしゃるって思いましたね。お世辞ではなく、鳥肌モノでしたよ。

 

羽田)昨日横内謙介さんが、「地域を元気づける芝居がやっぱり大事なんだ」と、アフタートークでおっしゃっていましたね。

 

劇場は、見えないところにこそ工夫を!

終演後、ガラガラで、会員さんと交流する有馬自由さん

羽田)有馬さんが全国各地を廻られて、やりやすくて、いい劇場と思われるのはどんな点でしょうか。

有馬)例えば劇団で廻っていると、皆で荷物を降ろして、建て込みをするので、トラックから舞台までの条件とかがうまく考えられている所はいいなあ、よく分って設計されているなあって思いますね。そういうことは旅公演をするまではあまり考えたことは無かったのですが、パッと見の見てくれよりは実際の使い勝手ですね。凄く綺麗な劇場だけど、客席の床が硬くて、お客さんが歩くと凄い音がする劇場よりは、そうならないようにパンチカーペットが敷いてあったり、あまり目立たない配色で考えてあったり、観えにくい席が無いような客席の傾斜だったり、そういう劇場は、よく考えてつくられていると思いますね。勿論舞台袖は広い方がいいんでしょうが、作品によっては、逆に狭い方がむしろ面白い場合もあって、お芝居によって合う、合わないはあるでしょうね。
あまりにも大きいホールでは、お芝居がお客さんには届かないと思うし、客席から肉眼で観えて、肉声が届く限度ってあると思いますね。客席に座って舞台を観ている時よりも、舞台が終わってから、「こんなに広かったんだ」と驚くような劇場はきっといい劇場なんでしょうね。観ている時は広さなんて感じなくて、舞台と客席の一体感が感じられる空間というのは、実はそれをつくるために、見える所よりも、見えない所にすごく工夫と手間をかけた、ある意味贅沢な劇場なんだと思います。
お客さんの為に駐車場が確保され、休憩時間に色々歓談できるこういうロビー(公会堂2階)のようなスペースがあるのはとてもいいですね。客席と舞台の一体感を創るためには、客席とは関係ないかも知れないし、一見無駄かも知れないけれど、搬入口とか、袖とか、ロビーとかは大事なことだと思います。
建てる時に、「こんな風にお客さんに見て貰いたい、劇場を味わって貰いたい」というホール側の企画があるといいですね。

羽田)この公会堂は使われてみてどうですか。

有馬)楽屋は近くていいですよ。搬入口もすぐにトラックが着けられるし。搬入してすぐに舞台ですから、条件としてはすごくいいですね。今日は雨が降ってしまったので、屋根がもうちょっと搬入口の方にもあれば、助かるなあ、と。

羽田)ここの敷地はこの公会堂の他に中央学習センターと市の図書館の3館があるんですが、この公会堂もかなり老朽化していますので、私たちは3館の建て直しを提案しています。能登演劇堂を設計された方に依頼して、「福島の芸術ホール構想」をつくって頂きましたが、有馬さんの様なプロの役者さんなどからも意見を聞いて「福島にはこんないい劇場がある」と言われるものをつくりたいです。

有馬)搬入も搬出も全部劇団の役者でやっていますから、色んな劇場のことがインプットされます。あそこは搬入が楽だから時間が短

縮できるとか、あそこは下手が狭いから考えた方がいいぞとか。僕らにとっては、ウォーミングアップや、ストレッチが出来るロビーがあると、あそこのホールはいいよね、とかなりますね。

 

劇場は、いろいろな使い方ができます!

劇場はこんなに楽しい空間

有馬)僕は専門学校で演劇の講師をやっていますので、その流れで夏休みには、色んな高校の演劇部の合宿に学校から派遣されたりするんです。福島県だと、猪苗代にある国立磐梯青年の家で、2泊3日の合宿をしました。そこは研修施設ですが、岩手や新潟では、劇場でやるんですよ。岩手の場合は、劇場に2日間で400人位集まったかな。通いですが、泊まる子ども達もいます。役者チームは6班位ありましたが、各班毎に各階のロビーや会議室なんかに分かれると、十分稽古が出来るんですよ。スタッフ科の研修は研修室で色んな講座を開いたり、搬入スペースで、実際に大道具を作ったりします。ワアワアいう声は聞こえるし、劇場本来の姿ではないかもしれませんが、そんな風にも使えるんですよ。
そこに人が集まって、演劇の稽古をしたり、昼飯時には一ヵ所に集まって、弁当を広げながら午後の予定を話し合ったりするんです。だから劇場ってとっても面白いというか、いい使い方が出来ると思いましたよ。新潟では、最終日にホールの舞台を使い、ちゃんと照明も作って、各班毎に10分ずつ成果を発表し合いました。

羽田)ほおー。そういう発想っていいですね。
わたし達の会でも、これからの街の未来は、若者達が創っていくということで、若い人達中心のシンポジウムを開催していますが、若い人達からは合宿所が無いという声を聞きます。有馬さんからお話をお聞きして、そういう劇場空間の使い方って凄いと思えましたね。

有馬)劇場を使ってというのは、貴重な経験になると思います。ちょっと綺麗事に過ぎるかもしれませんが、子ども達に限らず大人だって、「劇場にいったら面白いことがあるよ」みたいな感覚が、もっと身近にあるといいなあ、と思います。

羽田)これからは、ホールの通路や階段を使った展示コーナーなどの発想は大事ですね。

有馬)今回もコーラス隊の方達から、「私達もこんな舞台に立てるんだ」と感激されましたよ。有名な歌手がコンサートをやったと同じ舞台で、同じ様に私達のサークルも発表会をしましょう、となったら勿論モチベーションも上がるでしょうし、同じ時にロビーでは子ども達の作品を並べたり、例えば、幼児を預かることが出来たら、その間お母さん達のワークショップをするなんてこともできるかもしれない。
劇場空間は、実は本当にいいことが一杯あるよ、なんていう空気が広がって欲しいですよね。

羽田)そんな風に常に老若男女が集まって、「あそこに行けば何かが楽しめる」と言えるような施設、市民に慕われ、市民を元気にする施設、そんな施設が福島にも是非欲しいと思っています。いいことを伺いました。

劇場は一番安全な空間

羽田)公共ホールも含めて、福島県内施設の耐震性調査の結果、震度6位の地震で崩壊しそうな施設に、公会堂も入っているんですよ。

有馬)僕は3.11の東日本大震災の時は栃木県の劇場で本番中でした。栃木でもかなり大きな揺れでしたので、勿論ビックリしましたし、公演も途中で中止でした。駐車場のトラックが映画のようにバウンドしましたから、「嘘だろう」って。でも考えたら近隣には住宅地があって、国道があって、そこに劇場があったんだけれど、劇場って一番頑丈な建物だと思えましたし、またそうあるべきだとも思えました。いざという時には避難者だって受け入れられるだろうと思いましたね。
震源地とかの情報が全く入ってこない不安な状況でしたが、どう考えてもここ劇場って実は一番安全な場所だよね、と思えて、物凄く心強かったのを覚えています。

 

有馬さんにとって福島の思い出は?

羽田)有馬さんは、福島は何度目ですか。

有馬)福島には『新浄瑠璃 百鬼丸』も『アトムへの伝言』も『ジプシー』でもお世話になりました。それからワークショップでも。僕にとって思い出深いのは、2007年大河ドラマ『風林火山』に出演した時、猪苗代スキー場近辺のホテルに4,5日滞在して撮影したことです。猪苗代湖でもロケがありました。福島に馬のチームがあって、そこからお借りした馬で、僕は乗っていませんが、戦闘シーンを撮ったり、知り合いがいたので会津若松に御蕎麦を食べに行ったりしましたね。

羽田)福島も結構広い県ですが、今回の旅公演、次はいわきに行かれるんですね。

有馬)福島は、郡山、福島と公演。明日須賀川に移動して、あさって公演、その次の日が会津。それから山形、青森とかを廻ってから、いわきです。

羽田)いわきはアリオスという小、中、大のホールがあるいい劇場が出来たんですよ。

羽田)今回のお芝居はとても疲れる芝居だと思いますが、東北6県をずーっと廻られながら、それを毎日の様に演じられるのは本当に大変だと思います。健康を維持されている秘訣や、気を付けられていることは何でしょう。

有馬)やっぱり50を超えると、若いつもりでも明らかに体力も、回復力も落ちているということは日々実感しますので、ケアをしませんとね。勿論無茶をする時はしますが(笑)、始まる前、終わった後のストレッチは欠かせません。お酒を飲んでも、寝る前にはちょっと酔いを覚まして、冷静さを取り戻してから、ちゃんと着替えて、暖かくしてから寝るようにしています。

羽田)有馬さんは1988年に劇団善人会議(現・扉座)に入団された時に、何と稽古参加3日目にして「新羅生門」の桃太郎役に大抜擢されたそうですね。その頃の御自分の体の状況とは違うでしょうが、私達から見る限りにおいては、今でも青年のようにお若いですね。

有馬)年齢を重ねても、キャリアを重ねても、ハードルは全然下がらないんですよ(笑)。うちの座長からは今だに「はい、これやっといて」と宿題が出ますから(笑)。「えーっ、そんな簡単に出来ませんよ」と思っても、「やっとけ」ですからね。でも慢心する方が一番体には良くないんだと思います。ヤバイ、ヤバイと危機感を持ちながらやっている方が、健康にはいいのかもしれませんね。「今のうちに宿題やっとかないと、本番でエライことになるぞ」と思うと、倒れたり、風邪をひいたりしている場合ではないみたいなことは、あるかもしれませんね。

羽田)長旅でこれからも大変でしょうが、本当に楽しい芝居を有難うございました。

有馬)ぜひいいホールが出来ますように。

About 福島の芸術ホールを創る会

View all posts by 福島の芸術ホールを創る会 →

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です