市民が支え育て成長するホール 小美玉市四季文化館「みの~れ」視察

きっかけは一冊の本から

福島大学の荒木田岳先生から「文化がみの~れ物語」という本を紹介いただきました。本の帯には「住民の住民による住民のための文化ホールつくっちゃいました」とありました。

まさに私たちが求めているホール実現の理想の形を言葉にしたもの。その本には、美野里町にできた文化センターの1996年準備段階から2002年開館記念の町民ミュージカルを成功させるまでの道のりが、それに携わった市民の目線で描かれていました。

「この町はいったいどこにあるの?」「えー!お隣茨城県小美玉市。霞ケ浦の北にある町らしい。」

この聞き慣れない市は2006年に隣り合っている小川町、美野里町、玉里村の3町村合併を経て出来たそう。現在ホールの正式名称は「小美玉市四季文化館みの~れ」(以下ホール名は略称みの~れ)。徹底した住民参画で出来たこのホールみの~れは、合併後の10年を過ぎてどうなっているのだろうという興味も湧いてきました。本はその後委員の間で回し読みされ、全員一致でぜひ今年の視察地にしたいと決まりました。

委員10名車に分乗し、2時間半かけて到着。田園地帯の中で木々に囲まれ、広い芝生の公園に面してその目指す建物はありました。 すぐ近くには入浴施設もあり市民の憩いの場になっていました。

ホールのそばのレストランで昼食の後、山口茂徳館長さんと、3人の若手職員の方からプロジェクターを使っての概要説明。その後施設の見学となりました。

小美玉市は人口52,000人で、もともとの農村地帯に近年首都圏から移り住んできた新住民が増え、人口が増加している町だそうです。

小美玉市四季文化館 みの~れ
〠319-0132 小美玉市部室1069番地
☎0299-48-4466 FAX0299-48-4467
✿休館日は、年末・年始のみ
http://minole.city.omitama.lg.jp/

施設と見学

緑のホール

600席の多目的ホールで、音響性が高い。(1階席:546席/バルコニー席:46席)。客席後方に8席のおやこ室があり、親子で気兼ねなく鑑賞できる。

  • 広々とした舞台空間。
  • 客席はゆったり。(客席幅:55cm、客席列幅:1m)
  • 壁は自然素材の珪藻土仕上げで「土」を、壁の一部で「樹木」を、床と天井は木の色を生かし、ホール全体で「森」を表現している。
  • 大道具搬入口は十分な広さがあるが、難点は、雨などの時に備えての庇が欲しいとのこと。
  • 客席に仕切りパネルがあり、322席にしても利用できる。少人数でも利用しやすく、その際の利用料金は半額
  • バリアフリー構造により、1階両サイドから車イスのまま客席・舞台へ移動可能。
【北側の1階席入口「緑のホワイエ」は電動で開き、ガラス越しに外の景色を取り込める。】

 

風のホール

風のホール【144席のロールバックチェアーを使用し、階段状の客席も設営可能】
  • 200~250席の多機能ホール。可動パネル及びピクチャーレールにより、ホールを最大3分割しての利用可能。作品展示にも対応。
  • 舞台部分が昇降可能なため、全体を平面状態でも利用可能。
  • 12月のジャズコンサートはドリンク付きでここで開催予定。飲食OKは公共ホールでは画期的。

風の広場(中庭)

  • 市木のケヤキがある屋外広場。
  • 風のホールとの一体利用により、様々なイベントで利用が可能。

光のホワイエ

  • 入口を入ったところに広がる、自然光がいっぱいに降り注ぐ高さのある空間。展示コーナーを兼ねており、見学の日はアマチュアの画家の展覧会が開催されていた。
  • 職員のいる事務室は入口脇にあるが、ガラス張りで、住民が声をかけやすい配慮がされている

練習室1,2,3

  • 大きさの違う3つの部屋。
  • 完全な防音機能あり。
  • 会議室としての利用も便利

楽屋

  • 楽屋は2つ。それぞれ2分割して、4室でも利用可能。

トイレ

住民からのアイデアが最も生かされ、気持ちよく利用できる工夫がいっぱい。

  • 女性ブースの数が多い。
  • 手すりをブース全部に設置。
  • おむつ交換スペースが女性トイレだけでなく、男性側にも設置。
  • 多目的トイレはオストメイトの方にも配慮。
  • 必要に応じて女性トイレを増やすことが可能。

 

❖ みの~れの住民参加

「みの~れ」の特徴は「新しいまちづくりスタイルの構築」と「住民参画体制」であり、ミッションは「つどう・つなぐ・つくる」、コンセプトは「成長する文化センター」と明確に表現されていました。

みの~れミッション3つの「つ」

「つどう」:住む人が日常的につどう

「つなぐ」:住む人と文化をつなぐ

「つくる」:住む人が参画して劇場をつくる
住む人が参加して作品をつくる

こうした言葉を生み出したのも公募住民の委員会(行政側も入る)でした。2002年秋に開館した「みの~れ」は現在15歳、稼働率は大ホールが85.86%、みの~れ全体で98.24%を誇ります。その原動力は開館に至るまでの住民参加を、開館してからも更に拡げ続けたことにあるようです。

 

❖ 支え合う住民組織の役割

みの~れ支援隊を例にとると、住民劇団「演劇ファミリーMyu」の90名も、文化情報誌「おみたマガジン」編集局11名も、公演スタッフの144名も全て支援隊の1部門として位置づけられています。山口館長のお話から、これらの人々が単にホールへの協力というのではなく、主体的に関わり、自分たちのやりたいことをホール拠点に生き生きと実現しているように感じました。

※みの~れをレストランに例えると・・・

四季文化館企画実行委員会・・・経営者
みの~れの役割を考え、方針を決定する中心組織、心臓部(公募で15名)

✿事業別プロジェクトチーム・・・調理人たち
方針を踏まえた自主事業の実行運営チーム(7組織73名)

✿みの~れ支援隊  ホールスタッフ
創造活動や自主自業を主体的に底支えする組織(4部門7組織158名)

 

❖ スタッフ体制

≪民間登用4名≫

  • 館長(2003年から14年目。みの~れの構想に関わる未来の夢創造委員会の委員を経験)
  • 地域文化コーディネーター(文化芸術を基軸とするまちづくりを司り、文化芸術と住民をつなぐ推進役として、館の事業計画と運営に携わる。)
  • 文化創造コーディネーター(地域資源を生かし、住民と行政の小美玉市まるごとホール計画の実践を行う。)
  • 舞台技術管理マネージャー(音響・照明の専門スタッフで常勤・民間会社から派遣)

≪市役所職員7名≫

 

❖ 予算(人件費を除く)

  • 自主事業費(事業数60本):1,930万
  • 施設維持管理費:4,300万

見学を終えて

見学した委員みんなが本当にすばらしいと口を揃えて言えるホールでした。ホールを計画された時の美野里町の町長さんが今の小美玉市の市長さんで、7期目だそうです。行政が一貫して住民参加を貫くことができているトップの姿勢にあるのでしょう。山口館長はとても気さくで、笑顔がやさしく、若い職員ともいい関係で仕事をされていることが良く分かりました。その館長から「トイレがとてもきれいでしょ?」と聞かれました。お掃除の人が開館以来ずっと変わらずに携わっておられるとのこと。このホールを大切に思う心が職員みんなに行き渡っている証です。

「住民とともに成長する文化センター」は15歳になった今も輝き続けていました。ちなみに案内してくださった職員の一人永井千穂さんは、子どもの時、開館記念ミュージカルの出演者だったそうです。もし何かで「みの~れ」の近くに行かれることがあったら、ぜひ訪れて頂きたいものです。またホームページも充実していますので、おすすめします。

(担当:斎藤光子、森田美和子)

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