新春対談 劇団文化座 佐藤哲也さん

2017年11月26日(日)、福島市公会堂の2階ロビーで、福島演劇鑑賞会の例会『三婆』(劇団文化座)に、武市産業専務 瀬戸重助役で出演された劇団文化座俳優の佐藤哲也さんと、「福島の芸術ホールを創る会」の笠原慶大事務局長との新春対談が行われました。

ホールのロビーは、
未知の世界へのタイムトンネル


佐藤哲也さん(さとうてつや)さん

✿1968年10月6日生 新潟県出身

✿1989年劇団文化座に入座

✿主な出演作
『リリオム』『瞽女さきてくんない』『獅子』『あかきくちびるあせぬまに』『稲葉小僧』『てけれっつのぱ』


佐藤さんのお爺ちゃん役は絶品!

舞台『三婆』より

笠原)お久しぶりといいますか、佐藤さんにはいろいろお世話になりまして。(佐藤哲也さんは6年前の例会『てけれっつのぱ』で来福)

今回の「三婆」のおじいちゃん役は素晴らしかったですね。体の動きが凄い。あんなおじいちゃんって本当にいますものね。

佐藤)お手本はうちの親父です。

 

 

公会堂の建て替えを要望して30年

笠原)私達「福島の芸術ホールを創る会」は、福島に演劇などの舞台芸術に適したホールを建てて欲しいとずっと言い続けてきまして、もう30年になります。

佐藤)30年ですか!?

笠原)その間、福島テルサという473席の小ホールは出来ましたが、その規模ですと採算を取るのが難しいんですよ。
この公会堂は、市民に非常に親しまれていますが、建ててもう57年、古いんです。来年の4月から休館になることが決まりました。福島市は、先週19日に市長選がありましたが、4人の候補者にはあらかじめ公開質問状を送り、回答も頂いています。当選された新人の木幡浩さんの回答には「公会堂に替わる新しいホールは必要です。公会堂を建て替える時は『ホールを創る会』の意見も聞いて」と言ってくださっているので、この市長に私たちは期待しています。今こそ、新しいホールを建てて欲しいことをより強く訴えていかなければ、と思っている状況です。

 

佐藤さんお薦めのホールは?

 

笠原)全国を廻っていらっしゃる佐藤さんにお薦めのホールをお聞きしたい。

➀佐藤さんお薦めのホールその1

北九州芸術劇場

〠802-0815 北九州市小倉区室町1丁目1-1-11 リバーウォーク北九州内
✤大ホール(多目的ホール):1,269席
✤中ホール(演劇専用ホール):700席
✤小劇場(平土間の多目的スペース):96~216席
http://q-geki.jp/

佐藤)ホール自体がとてもコンパクトで、確か700席。客席が舞台を見下ろすような形です。一番前の客席でも舞台よりちょっと上の方にあって、そこから上の客席は傾斜になっています。全体の基調は黒。黒の壁というのは、きらびやかな色彩でデザインされた壁よりも締まるんですよ。芝居に集中できます。

そこの綱元、いわゆる吊り物は全部電動で、手動がありません。手動が無いかわりに可変といって、バトンの下りる時間を調節出来ます。芝居で劇的にすうーっと下ろしたい時は

そう出来るし、反対にゆーっくりも出来ます。

笠原)それは俳優さんだけじゃなくて、スタッフとして関わってもやりやすいのですか。

佐藤)仕込む側からすると電動の方がいいですが、全部電動で調節が効かないと、美術バトンとしてはしんどい。電動で可変が出来ればそれにこしたことはないということです。

 

②佐藤さんお薦めのホールその2

りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館

〠951-8132 新潟市中央区1番堀通3の2
✤劇場:固定席868席・車椅子席5席、オーケストラピット設営時714席
✤コンサートホール:1,884席 車椅子席6席
https://www.ryutopia.or.jp/

佐藤)傾斜の感じが、北九州芸術劇場と似ています。やっぱり黒が基調で、舞台バトンは全部電動。袖もめちゃくちゃ広い。1,500席規模の県民会館もありますが、お芝居を観るには絶対りゅーとぴあの方がいいのに、県民会館の方がいいということも聞くんですよ。演劇鑑賞会の方がおっしゃるには、演劇鑑賞会って高齢の方が多いじゃないですか、黒が基調で床も黒いと、入場する時怖いらしいんですね。また客席階段の奥行が狭いので、足を踏み外しそうになるらしいんです。結構急な感じなので、傾斜にするのも善し悪しですが、安全面がちゃんと確保されていると、怖いという感じがなくていいと思いますね。

笠原)今紹介されたホールについては資料とかを取り寄せて研究してみたいです。

 

③「ホールを創る会」理想のホール

笠原)能登演劇堂を設計された小林吉則さんに何度か福島に来て頂いて、「福島芸術ホール構想」を作成していただき、100号の記念機関紙に載せたものがこれです。ここの敷地面積で、公会堂、学習センター、図書館の複合館として設計して頂きました。

福島芸術ホール構想

佐藤)(機関紙を見ながら)なかなかよく納まっているじゃないですか。

 

芝居の出来は残響次第!

笠原)僕たちは演劇に適したホールを要望していますが、そうなると演劇しか出来ないという偏見を持たれがちなんですね。そんな風に言われたら哲也さんはどう答えますか。

佐藤)となると音楽ホールはあるんですか。

笠原)建って30年位ですが、1,000席の音楽堂があります。だから演劇のホールも必要だと出発から言っているんですが。

佐藤)こちらの機関紙で、演出家の西川信廣さんもハコモノ、ハコモノとおっしゃっていますけど、僕ら芝居をやっている人間からすると、多目的に出来ますよ、何でも出来ますよ、というホール程、残響とかが凄い。残響は多分オーケストラなどにはとても心地いいのかも知れないけど、芝居をやるにはワオン、ワオン、ワワオオンとなっちゃう。あいうえおと喋ると、アイウウエエーとか、何を言っているのか分らなくなっちゃう。とにかく芝居専門だったら残響が少ない方がいいんですよね。

笠原)芝居の出来は残響次第ですね。

佐藤)公会堂は音楽でも何でも出来るじゃないですか。公会堂は反響板ってありますか。

笠原)上に上げていますが、あるんですよ。

佐藤)反響板というのは必ず音楽ホールには必要ですから、多目的であれば、反響板は当然必要になるんですが、反響板は上に上げたりすることで、クリア出来ると思いますよ。

笠原)工夫次第ということですね。演劇ホールって多目的よりももっと多目的に色々出来ますよって言えばいいんでしょうかね。

佐藤)演劇専用のホールって言うから角が立つんでしょうかね。お芝居が出来て、反響板さえあれば音楽もクリア。スクリーンがあれば上映会もクリア。講演、お芝居、オーケストラ、映画。これで催し物としては大体のジャンルがクリアしていますよね。例会でミュージカルもやっているでしょうから、踊り、ダンスも大丈夫だと思います。

笠原)演劇を考えた時に絶対外せないのは?

佐藤)俳優としてお芝居をやる場合にはまず残響ですね。

 

お芝居に適した客席数とは?

笠原)ミュージカルなど2,000席でのお芝居もありますが、採算がとれるということからいうと、どの位の客席数がいいと思いますか。

佐藤)2,000席はやっぱりやりにくいですよ。僕がずっと廻っていて、丁度いいなと言う感じは500席位から1,200席位までかな。

笠原)1,200席は大きくないですか。

佐藤)8月、9月に公演した静岡県の浜松北のホールは確か1,200席ですが、そんなに広いイメージじゃなくて、大丈夫でした。1,200席でも声の通りさえ良ければそんなに気にすることはないですね。1,900席で、2階もあるホールでは、上の人はごめんなさいというか、見えにくいのはしょうがないので、声だけはなるべく飛ばすようにしました。
1,700席の會津風雅堂は大丈夫でした。ただエアポケットがあるみたいでした。客席の大体真ん中あたり、一番天井が高い部分に反響自体が全部寄ってくるので、そこの席は飛行機に乗った時のツーンとくるような感じで何かモアっと聴こえちゃうんですね。

笠原)観るのにはいいけれど、聴くのにはちょっと、という席が風雅堂にもあるんですね。

佐藤)そういう場合には、意識してそこに向かってしゃべることで、聞こえるようにします。横を向いていてもそこを意識してしゃべることによって聞こえるようにするのが一つの技術ですね。
少なければ500席なんて凄くいいですが、すでに473席の福島テルサがあるわけですね。北九州の中劇場は700席、新潟りゅーとぴあは868席。僕としては800席から1,000席というのが一番だと思いますね。

 

俳優にとって使い勝手のいいのは?

笠原)俳優さんが一番分かってらっしゃると思いますので。楽屋の造りとかについてお聞きしたいのですが。

舞台『三婆』より

佐藤)佐々木愛さん(『三婆』で武市の正妻役)からの言づてがあるんですよ。郡山の劇場にはエレベーターがあって、エレベーターを上ると、舞台の裏に楽屋があるので良いのですが、トイレが下なんですよ。

笠原)楽屋にないんですか。

佐藤)一階に下りるんですよ。「着物で上がるのが大変なので、トイレは楽屋と同じ階に欲しいということを言っておいてね」と言われました。だから一番いいのは、舞台面と同じフロアにあること。舞台の後ろに廊下があって、楽屋がある、これがベスト、完璧です。

笠原)そこにはちゃんとトイレもあると。

佐藤)それ以上もそれ以下もないですから。通路もまあ一間、僕の身長の180cm位の幅があると、芝居で使う小道具とか荷物も置けて、役者も走り抜けられますしね。
公会堂の場合は段差があるんですが、段差は無い方がいい。理想は絶対同じフラットということです。
舞台監督から言われたことですが、先ほど可変が出来る電動バトンと言いましたが、出来得るならば、もう一つ手引きのバトンが近くにポン、ポンとあると凄くいいそうです。お芝居は手作りのものですから、やっぱり手引きですうーっと下りてくる良さって必ずあるんです。電動も手引きもあるのが理想です。もう一つプロセニアムに、美術バトンが手引きであるといいということです。芝居の中で紗幕とかが下りてきたりするじゃないですか、これはもう芝居の息と一緒なんです。紗幕を吊ったり、持ち込みで何か描いてある幕を吊ったりする芝居の時に空バトンがないと、一回重いのを全部ばらして、それを吊り替えてやらなきゃならないんですよ。

笠原)演劇的に必要だという部分ですね。

佐藤)そうです。手引きであれば、看板だって吊ろうと思えば吊れますし、あとは技術を持っているプロの方がやりますから。

笠原)舞台表現が豊かになるんですね。

佐藤)電動の仕込みは楽だけれども、手引きも捨てたものではないということです。職人技というか。プロの技です。

笠原)ところで緞帳って必要でしょうか。

佐藤)緞帳って、昔の寄贈というか、その地元の何かがあるじゃないですか。僕自身は懐かしいというか、ノスタルジーは感じますが。でも緞帳だったら黒い暗転幕でいいと思うんですよ。ただ始まる時に黒幕が閉まっていたらどうでしょうね。だったら真っ黒じゃない何かがあればいいですかね。

笠原)あまりそこにお金を掛けないで、ということでしょうか。

佐藤)黒い暗転幕も相当高額ですから。芝居の中でたまに黒い幕がすうーっと下りて来るじゃないですか。あれが劇場に備え付けの所もありますが、あれだけのタッパですから、それはそれで高額ですが、緞帳のあの装飾に比べたらまだ安いとは思いますよ。ことさら緞帳は必要ないと僕は思いますね。

 

ロビーはお芝居へのタイムトンネル

笠原)どんなロビーがいいでしょうか。

佐藤)僕の持論を言ってもいいですか。演劇を観に行った時、演劇でなくてもいいんですが、ロビーには、今いる時間から、違う世界、違う時間、違う国、そういう所に入っていくという感覚があるといいですね。抽象的なんですけど。何か違うもの、自分の日常にはない世界に入っていくという感覚です。外からロビーを経由して劇場に入る時、そのロビーが何だろう、トンネルというか、タイムマシンに乗りましたみたいな感じですっと入ると、舞台は見えているのか、いないのか、どんなセットがあるのか、緞帳はおりているのか、そういう未知の世界に来て、さあ何を観ることが出来るんだろう、何を体験できるんだろうという、そんな感じがあればいいなあ。

笠原)そんな風にお芝居の世界に入っていける空間、雰囲気のロビーは素敵ですね。

佐藤)空間はそんなに広くなくてもいいです。ただちょっとゆったり座れる位のことはあってもいいかな。楽しむためにスタンバイしているような感じというか、そんな空間であればいいと僕は思いますね。

 

人が集えるホールが理想!!

佐藤)ホールはことさら奇をてらったものは必要なくて、非常にシンプルでいいと思います。有名な建築家の設計には、丸いホールなんていうのもありますが、有名な建築家の設計だと壊せない。逆に外観など保存しておかなければならないんです。外観とかではなくて、あくまで使い勝手を追求した方が必ずいいホールができますね。単純に言っちゃうと、これを言うと身も蓋もないんですが、音響さんがいつも言うんですよ、「普通のホールが一番いい」ってね。この設計図(福島の芸術ホール構想)は、とてもいい雰囲気のホールだと思いますね。

笠原)この設計図は複合館にしていますが、ホール全体の形としては、単館と複合館のどちらがいいと思われますか。

佐藤)僕も複合館でいいと思いますよ。色んなものがあった方がいいですよね。人が集まってくるというか、集えるというか、そういう感じだといいですね。演劇ホールで単館だと、何にも無い時は閉まっている訳ですよね。閉まっているホール程うら寂しいことはないですからね。ロビーには自由に出入り出来るけれども、ホールに入る所には人が立つ。そういう形でやっていると、「何かやっているね」と興味が持てるというのが一番ですね。

笠原)「福島の芸術ホール構想」では「ガレリアホール」といって、常に自由に出入り出来るという部分をつくってあるんです。

佐藤)なるほど、なるほど、そうか。ロビーが真ん中にあるんだ。これはすごくいい。いいアイディアですね。

笠原)褒めて頂いたところで時間がきてしまいました。有難うございました。(担当:柳谷紀子)

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