市民のための身近なホール 新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ視察

信濃川畔にたたずむ卵型ホール

今年の視察はお隣の新潟県新潟市。同じ県庁所在地ですが、我が福島市28万の人口に対し新潟市は80万を数えます。その新潟市で築20年の「りゅーとぴあ」という愛称のホールが今回の視察対象でした。正式名称は新潟市民芸術文化会館です。

平成30年(2018)11月7日訪問。信濃川に面した白山公園の中、大きな丸いガラス張りの建物がたたずんでいました。下の図を見ると、たまごの形の円筒で6階建ての建物の中に、最大2000人収容のコンサートホール、868席の劇場、382席の能楽堂が入っています。正規の出入り口は2階にあり、入ってすぐに、外の景色を取り込む大きな全面ガラスのホワイエやロビーに圧倒されました。季節は晩秋、木々の紅葉が最後の輝きを放っているのを建物の中で常に感じられるのです。ここは外の公園と一体のものとして建てられていることが特色です。

新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ
〒951-8132 新潟県新潟市中央区一番堀通町3−2
https://www.ryutopia.or.jp/

文化の創造にも取り組む

りゅーとぴあの管理運営をになうのは、指定管理者・新潟市芸術文化振興財団です。私たちを案内してくれたのは、その職員の金子文子さんと木澤美恵子さんです。財団は毎年詳しい事業実績報告書を出していて、この報告書からは、いかに多岐にわたる事業を展開しているかがわかりました。舞踊部門ではりゅーとぴあ専属のダンス・カンパニーNoism(10人のプロ集団)をかかえ、国内外で公演活動を展開、演劇部門では「りゅーとぴあプロデュース」のオリジナル作品を創造し全国に発信しているとのことです。更には「りゅーとぴあ演劇スタジオ・アプリコット」という、公募した小4から高校生までの約50名の子どもたちが1年間専門家の指導を受けて、毎年2回創作発表の公演をしているそうです。特に今年は20周年記念というのでオーディションに合格した市民が、音楽家の宮川彬良氏の指導をうけ、プロの俳優と共演するミュージカル作品を作り上げ、10月下旬に3日間にわたり上演したばかりでした。

その他にも書ききれないのですが、市内の小学校などに出向くアウトリーチ事業もたくさん行っています。しかし5年ごとの事業委託というのは、精力的に仕事に携わる職員さんたちには不安定な雇用形態だと思いました。今のところ指定管理者制度導入以来毎回契約更新しているとのことです。一方で市からの委託経費は約7億4千万、事業収入などを含めても11億6千万円の予算で、これだけのホールの運営を行っているのは立派ですが、巨大なホールの維持管理費も人件費(正規・臨時含め約60名)もたくさん必要なわけで大変なことも多いのではと感じました。

行き届いた設備がいっぱいの劇場

劇場について詳しく述べていきます。868名収容の劇場は黒を基調とした空間で、まず目に飛び込んできたのはたくさんの照明機材です。演劇、オペラ、ミュージカル、歌舞伎、舞踊まで対応したものなのでしょう。

  • 舞台
    間口32.4メートル奥行14.6メートルの充分な広さに、舞台袖空間もゆったりしている。
  • 客席
    客席最後尾でも舞台から25メートルと近いが、その分傾斜は急である。1階席から3階席までの専用エレベーターがついている。座席ナンバーは点字の表示あり。
  • 楽屋
    大小あわせて8部屋あり、その他にスタッフルームが2つ、更にはサロンのようなくつろぐ空間があり、役者さんたちは嬉しいと思う。鏡には化粧用の照明もついている。シャワー室、洗濯室も完備。
  • 搬入口
    11トントラック2台が屋内に入ることができ、シャッターがついており、天候に左右されず搬入できる。舞台にもすぐに運べる近さ。
  • 駐車場
    このホールの一番の悩みが駐車場の狭さ。600台分のスペースがあるが、隣接する県民会館や市音楽文化会館との共用であり、催し物が重なれば満杯で不便することになる。公共交通の利用を呼びかけることしかない。
黒を基調とした劇場空間、広い舞台

まとめ

全面ガラスで吹き抜けのゆったりしたホワイエ、ベンチも

周囲の自然を建物の中に意識的に取り込むためか、屋内空間は余計な装飾を排し、シンプルさと機能性を重視していると感じました。隅々まで演じる人・観る人の立場をよく考慮してつくられた劇場でした。年間稼働率もコンサートホール85%、劇場77%というのは、改修工事の影響もある中、立派だと思います。自主事業が多くの入場者を集めている中、貸館事業の入場者が減少していることが懸念されているようです。館内に「癒しの小路」という場所がありました。公園に憩いにきた市民が気軽に立ち寄ってもらえるために、ホワイエやロビーなどを常に開放しているそうです。また1コイン(500円)コンサートのポスターも見かけました。「市民のためのホールが身近であってほしい」という強い思いが伝わってきました。

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